遺言にはいくつか注意すべきことがあります。
遺留分について
遺言は被相続人が自らの意志によって相続財産の分配を行うことができます。
そのため、原則的には遺言に記載されているとおりに財産の分配が行われることになります。
(なお遺言書に遺産分割協議書に関して特段の禁止事項がなく、遺産の対象が相続人のみの場合は、相続人全員の納得の上で遺言書とは異なる内容の遺産分割協議書を作成することができます)
しかし相続人の中に
1.配偶者(*1)
2.直系卑属(*2)
3.直系尊属(*2)
が含まれていた場合、必ずしも遺言書通りの配分になるとは限りません。
上記の1~3に当たる人物が相続人にいる場合は遺留分(民法1028条他)という制度により、法定相続分の半分の額を請求する権利(遺留分減殺請求権:民法1031条)が認められており、相続人の意思次第によって、遺留分に係る財産分は遺言書とは違う相続財産の配分になることがあります。
(遺留分権利者本人の意思以外に遺留分の請求を止める手段はありません)
(注)相続財産には生前に受け取った財産も含みます。そのため、相続発生時の財産がそのまま対象とはなりません。例えば、生前に子どもの1人にだけ家の取得資金を出していた場合などはその子に対しての遺言書における財産分配分がない場合でも遺留分を侵害してこともありえます。
(*1)内縁の場合は配偶者とは扱われません、相続時に籍に入っていることが必要です
(*2)養子、養親も含みます。
半血の兄弟姉妹(異父母の兄弟姉妹)は法定相続分が半分に規定されているため、遺留分も半分になります。
(注)遺産の贈与相手として記していた人物が先に亡くなってしまった場合は亡くなった方に相続人がいたとしてもその遺産部分については無効なものとされます。そのため、遺言書に記載された人物が先になくなった場合についてのことも書かれていない限り、その財産分については通常の相続財産と同じに扱われることになります。
なお、遺言書に書かれている財産について生前に被相続人が処分していた場合、その財産についての部分については遺言を撤回したものとされます。
相続人について
相続人の範囲
相続人になれる人物は
1.配偶者
2.直系卑属
3.直系尊属
4.兄弟姉妹
となります。この内1以外の2から4に当たる人は番号の若い順位の人物がいる場合は相続人とはなれません。
また2、3に当たる人は代襲相続という形で直近の生存者に当たるまで順々に離れた世代へと相続人の地位を得ることができますが、4の兄弟姉妹はその子(被相続人の甥、姪)までしか相続人にはなれません。
(*)代襲相続の場合養子の子については注意が必要です。養子に子がいる場合において先に養子がなくなってしまった場合、養子の子は被相続人と養子との養子縁組がなされた後に養子の子として生まれる、又は養子がさらに養子として迎えた場合でなければ代襲相続人とはなりません。
現在の推定相続人を調査するためには被相続人の誕生してから現状の最終的に編纂された全戸籍を順に調べる必要があります。戸籍は出生時に親の戸籍に加えられますが、その後、婚姻関係の変化等により別の戸籍が作られます。
同じ戸籍に入ったものの内、配偶者や養子については離縁により相続人の地位を失うことになります。しかし、前配偶者との子や非嫡出子は相続人の地位を失うことはありません。そのため、戸籍の記載の内、養子で離縁した場合を除いては、子については推定相続人となります。
相続人の欠格・排除について
推定相続人の内、欠格欠格事由に当たる推定相続人や排除をされた推定相続人は、相続人となることはできませんし、遺留分もありません。
両者とも相続人を相続人では無くす点は似ていますが、欠格が規定された事由に当たれば自動的に相続人としての資格を失いますが、排除は被相続人の意思により相続人とはならなくなる点に違いがあります。また欠格者に対しては遺贈もできなくなる(民965条)のに対し排除者には遺贈をすることができます。
欠格事由について
欠格事由について民法では5つ挙げられております。(民891条)
1.故意に被相続人、先順位・同順位の相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた者(*1)
2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者(*2)
3.詐欺・強迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者
4.詐欺・強迫により、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者
5.相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿した者(*5)
(*1)故意の殺人(未遂)の罪に処せられた場合のみです(執行猶予満了や傷害致死の場合は含みません
(*2)配偶者や直系血族をかくまった場合は除きます(兄弟姉妹の場合は含まれます)
(*5)自らにとって不利な内容に書き換えた場合は原則的に該当しません
相続排除について
推定相続人に著しい非行の事実がある場合に、家庭裁判所に「推定相続人廃除調停申立て」をすることにより行い、遺言書によっても行うことができます。
非行については下記のようなものが該当します。
1.被相続人を虐待した場合
2.被相続人に対して、重大な侮辱を与えた場合
3.推定相続人にその他の著しい非行があった場合
ただし、実際の相続人の廃除は殆どの場合は認められることはありません。
なお、相続人の廃除は取消しをすることが可能です。
遺言書で廃除の取消しを行うこともできます。
遺言書の保管について
公証人役場にて原本が保管される公正証書遺言は別として
自筆証書遺言・秘密証書遺言は自ら保管する必要があります。
自宅で保管する場合は紛失の恐れや場合によっては遺言書の変造の恐れに注意する必要があります。
そのため、毎年陳呂ぷがかかりますが銀行等の貸し金庫で保管をする場合もございます。